患者様の口腔内の状況(残存歯数・咬合状態・歯周病罹患・カリエスリスク等)にもよりますが、長期的に見た場合、保険の冠(金属・技工サイド)は適合性には優れていないため二次カリエスになるリスクが高くなると考えられます。また神経を取る処置がしてある場合、金属の土台(支台築造)が装着されていると応力が集中し根破折のリスクも高くなると考えられます。入れ歯の場合はバネがかかっている歯をゆっくりと揺らす動きをするため次第に動揺がおこり抜歯せざるを得ない状態になってくる事が考えられます。結果としてブリッジ、入れ歯ともに作り直さなければならない状態になります。
一般的に冠は5~7年と統計が出ているようですし、別の高額な治療を売るための方便として保険のブリッジや部分入れ歯の寿命の短さを強調している医院もあるようですが、どれくらい長持ちするかは、やはり患者様の口腔内の状態によります。実際、30年前(私の父の代)に治療したとおっしゃる保険のブリッジも現に存在しています。入れ歯においても、私たち歯科医師からみると人工歯がすり減ったりガタついたりしてよくこれで食事ができているな、と思うものでも患者様は器用に使いこなしお食事ができるとおっしゃっています。入れ歯はこんなものだと諦めていらっしゃるのかもしれませんが、入れ歯に限って言えば、患者様が不具合を感じダメだと思った時が、その入れ歯の寿命ということになると思います。
保険治療には様々な意味で限界があり、現在の保険制度が変わらなければこの先同じ状況が続くであろうと思っていますが、保険治療だからといって明らかに手抜きをした治療がおこなわれている場合、憤りを感じることもあります。また多くの患者様は保険で最高の治療を求めますので、不具合が生じた時に、たとえその治療を行なった前医がきちんとした治療をしていたとしても、前医を悪者にする場合も残念ながらあります。保険制度の限界を患者さんに正しくお伝えしつつ、最善の治療を提案し行なっていきたいと考えています。
本来、味覚は舌にあるもので入れ歯の装着には関係がないはずですが「入れ歯にしてから味がよくわからなくなった」と聞く事があります。美味しい食事というのは味そのものだけではなく、食感、温度、のど越し等、様々なものが組み合わさり美味しいとなるのでしょう。入れ歯は残念ながら自分自身の歯と同じような噛み心地は味わう事ができません。また食事中に入れ歯がずれたり浮いたり入れ歯の下に食物が入り込んだりすると、そのことばかりが気になりゆっくりと味わえない事も美味しく食事ができないといった理由の一つになるのだと思います。
ブリッジに関しては、適合の問題から二次カリエスのリスクが高くなりますので毎日の口腔ケアを丁寧におこなう事だと思います。早期発見の意味から定期的なメインテナンスも必要です。
入れ歯に関しては、毎日洗浄をおこない清潔に保つ事と、バネがかかっている歯は汚れが溜まりやすくカリエスになりやすいので重点的なケア(歯ブラシ)が必要です。