高齢になるにつれ、喪失するものが多くなっていくのが現状です。体力や気力をはじめ、社会的地位や仕事(退職)、配偶者や同年代の友人の死、など。その中でご自身の歯の喪失というものもメンタル的には大きいと言われています。残存歯が少なくなってくれば入れ歯になるケースがほとんどで『入れ歯=年寄り』というイメージが根強くあるようです。今までご自身の歯の時は何でも食べる事ができ、笑顔で人と話す事ができていたのに何らかの不便を感じ、入れ歯に対する抵抗感やマイナスイメージから気分的に落ち込んでしまう方もいらっしゃいます。
食感(コリコリ・プチプチなど)は歯根膜があることによって感じる事ができるため、残存歯が多ければそれだけお食事を楽しむ事ができると言えます。また良く噛む事により唾液量が増え免疫力が上がり、脳血流量が増えることにより痴呆の防止に役立つと言われています。
そのため、私は「使える歯は極力残す」「天然歯に勝るものはない」という考えの基、診療しています。(ただし、無理に歯を残すことで患者さんにデメリットが生じる場合や、ブリッジの支台歯や入れ歯の鉤歯になる歯に根の治療が繰り返し行われていて、なおかつ根尖に病変がある時。また、セルフケアができない場合の親知らずの場合には、やむなく抜歯することもあります。)